川原毛

(高松日記:秋田県湯沢市)

=真澄記=

八幡地獄と言って、火井二つあって高く燃え上がる。その火の色白く、風に鳴り響いて冷たく恐ろしい。 屏風石、染屋の地獄、ばくろうの地獄など、地獄地獄を巡り巡って、地獄の山中も日が暮れた。 石硫黄を掘る小屋が軒を並べている。その長の家で一夜を乞い泊まった。

 谷川にかけ渡した丸木橋を危うく踏んで、川原毛の温泉に至る九曲の山道を下れば、高さ十七、八丈ばかりと思われる湯の滝が落ちていた。

 病人はみな「螻蓑(けらみの)」というものを着て、編笠のようなもので頭を覆って、この滝に身を打たせている。 このようなものを着なければ、小石が落ちてきて体を打ち、くだくような心地がすると言う。

 滝の上にまた小滝がある。小滝の下には滝淵があり、その深さは計り知れない。そこを「目蓮尊者ノ母の地獄」と言う。

湯の大滝の中に、不動明王を据えている。この明王の頭上を越えて、滝の落ちかかるさまはめずらしい。