(男鹿の春風:秋田県男鹿市北浦)
=真澄記=
真山より落ちる大滝という所がある。
仰ぎ見れば石の梁が虹のようによこたう中から水が落ちる様は、世に例えるものがない美しさである。
左右には八重や一重の白い桜が青葉さす木々の中に混じって、これもまた美しい。
昔ここに紅がことさらに美しい八重桜があったが、石梁を越えてくる雪解けの増水で根ごと落ちて枯れてしまったそうだ。
今ここに咲いていたらどんなに良かっただろうと供の翁と残念そうに語った。